首都圏の地形地質の特徴

1.はじめに
 日本の首都には約3700万人もの住民がおり,実質的に世界最大の都市です.しかし,自然災害も多く,地震,火山噴火,台風,洪水,高潮などの影響を受ける可能性があります.さらに,都市構造が脆弱であるにもかかわらず,経済的に価値のあるものが集積しています.ミュンヘン再保険機構は,2003年に世界の都市のリスク評価をおこない,日本の東京から横浜が世界で最もリスクが高いと指摘しました.

point=171(Hazard=10,Vulnerabillity=7.1,Exposed values=10.0)

しかし,古来日本人は,そのことは百も承知で住み続けています.繰り返される大地震や大火,火山噴火による火山灰や泥流,台風による洪水,津波ゴジラ.そこに,バラックを建てて,都市を再建して住み続けているのです.まさに,世界の謎です.いったい,どのようなところなのか,地形と地質をひも解いていきましょう.

2.赤色立体地図
 2002年,わたしはそれまでにない全く新しい発想の地図を発明しました.1枚で立体的に見える地図で,富士山の青木ヶ原樹海の調査の際に思いついたものです.この方法は,急斜面をより赤く,谷を暗く,尾根を明るく表限します.さらに,高度段彩をかさねて表現することが多いです.きょうは,この表現を使って,私たちの周りの地形を見てみましょう.

3.首都圏の地形
図1は,首都圏の地形図で周辺の海底地形も示しています.首都圏の南側には,相模トラフや駿河湾トラフと呼ばれる,水深2000mもの深い溝があり,フィリッピン海プレートの北限にあたります.相模トラフが震源となって1923年の関東地震が起きました.こまた,この辺りには火山フロントと呼ばれる,南北に連なる活火山の並びがあります.伊豆大島,箱根,富士山,浅間,榛名,赤城,と関東平野の西を取り囲むように並んでいます.これらの火山の噴火による火山灰が風化し,いわゆる関東ローム層の母材になっています.ロームは水はけがいいので台地を作り,都市の拡大には好都合でした.また,この図では,おおむね標高7mまでの地域を青く表現しています.いまから約6000年前の縄文時代の海の範囲を大まかに示しています.一方,海底地形も水深140m前後は黄緑色になるように着色しています.これは,今から2万年ほど前の最終氷期の海岸線の位置を示したものです.地形を理解するうえで,海面変動による影響を考えることはとても重要です.図2は,建物も表現したデータから作成した図で,東京・神奈川・千葉・埼玉付近の拡大をしています.鉄道,駅,道路も重ねてありますので,都市構造との関係もわかります.標高は,干渉色表現です.図3は,さらに都心部の微地形を拡大したものです.江戸時代以降の地形改変の過程がよくわかります.

4.まとめ
「地形の見える化」がいろいろなことに役に立てば幸いです.