レーザ計測による地震地震断層の研究

1.はじめに
平成28年(2016年)熊本地震では、4月14日(前震と呼ぶ)と4月16日(本震と呼ぶ)の2回、最大震度7(M 6.5、M 7.3)の地震が続けて発生し、その後もM5〜6クラスの地震活動が継続している。また,16日の本震に伴い,阿蘇市から御船町にかけて断続的に地表地震断層が出現した.地表地震断層やその周辺の変状把握は地震の理解や防災対策にとって重要である.このような変動や変位把握手法としてIn-SARは広域の変動を精緻にとらえられるが,断層近傍は変状が大きく不明瞭となりがちである.また,現地調査での変位量の認定は,地表に道路や畔などの既往の直線状構造物がある場合に限られる傾向がある.また,明瞭な地割れやずれをともなわない撓曲変形の認定は困難である.
地震の前後の航空レーザ計測の差分は,これらの断層近傍の詳細変形を明らかにするうえで非常に有効な方法である.これまでにもメキシコ(Oskin et al.,2012)や岩手・宮城や福島(Nissen et al.,2014)などで試みられており,大きな成果が得られている.

The 2016 Kumamoto earth quake is complete rupture for which pre- and post-event LiDAR data are available.A simple differencing of the gridded Digital Surface Models(DSMs) revealed spetacular images of fault zone deformation

2.測定
アジア航測では,2016年熊本地震による地表地震断層やその周辺の変形を解明するために,本震直前と直後の2時期に航空レーザ計測を行い,比較検討をおこなったので報告する.データの取得範囲は,嘉島町から西原村までで,取得密度は地震前が1点/m2,発生後は4点/m2点である.
2時期の比較を行う際の,誤差要因を減らすために,同一コース,同一計測システムで,同一の処理を行った.得られたデータをもとに,DSMを作成し,赤色立体地図とオルソ画像を作成した.さらに,DSMの単純垂直差分と,赤色立体地図による移動判読,ICPによるベクトル解析,さらに空中写真判読をおこなった.これらの結果をもとに,断層の位置や変形の広がりを推定した.

3.差分解析
まず、本震前後のLPデータより作成した50cmメッシュの数値表層モデル(Digital Surface Model、以下DSM)を用いて標高差分図を作成した。また、各時期の地形表現図(赤色立体地図、特許第3670274号)を作成した。この判読により、木山川低地の南北端に沿う2条の断層と、それに雁行する断層が確認できた。

3.赤色立体地図と写真判読による水平変位検討
次に、これら断層の変位を確認するため、益城町三竹北方付近のモデル地域において、DSMより作成した赤色立体地図上で畑の畦等の特徴点を目視抽出し、本震前後での水平移動方向と量を判読しベクトル表示した。また,同様に25㎝メッシュのオルソフォトの比較でも検討を行った.これらの成果ぁら、東西方向の断層は右ずれ断層と推定でき、北西―南東方向の断層は左横ずれ成分を伴っておいることが確認できた。判読作業はには個人差が避けられないので,客観性に課題がある

4.ICPによるベクトル計算
本震前後の点群データの変位量を計測する方法としてCCICP(Classification and Combined Iterative Closest Point)手法を用いた自動変位量抽出を試みた。これは指定した点周囲の移動前の点群について移動後の点群から点の周辺分布状況(線上・面上・散布状)が同じ最近傍点を探索するステップと、これらの対応点の間の剛体変換の算出を繰り返し行い、2つの点群間の移動量を計算するものである。1m2に4点程度の点密度の点群を用いて計算の結果、断層周辺で垂直移動と平行移動を精度よくとらえることができた。

4.CCICP
Movement between two point clouds before / after the main shock on 4/16 had been calculated automatically by point cloud registration with CCICP (Classification and Combined Iterative Closest Point) , where iteratively calculates rigid transformation in iterative process which first classifies point cloud into linear / planar / scatter points and minimizes point-to-plane and point-to-point distances between matching points of the same categories. The results of calculation with point clouds of about 50cm resolution shows precisely the tendencies of horizontal and vertical movement around the faults.

5.まとめ

文献
1)Oskin,M.E., et al.(2012),Near-field deformation from El Mayor Cucapah earthquake ewvealed by defferential LIDAR, Sciences,335,702-705,doi:10.1126/science.1213778.
2)Nissen et al.(2014),Coseismic failt zone deformation revealed with differential Lidar:examples from Japanese Mw〜8 intraplete earthquakes,Earth and Planetary Science Letters,405,244-256.